私たちが扱う古代小麦の中でも、特別な存在があります。
それがアングランです。
英語ではアインコーン(Einkorn)。
現在確認されている中では、人類が最も古くから栽培してきた小麦のひとつと言われています。
その歴史は一万三千年以上前まで遡ります。

今のトルコやシリア周辺。
人類が農耕を始めた頃から育てられてきた小麦です。
しかし現代では、収量が少ない。倒れやすい。
製パン性も低い。
効率を求める農業には向いていません。
そのため多くの農地から姿を消していきました。
もし効率だけを考えるなら、
アングランを選ぶ理由はほとんどありません。
それでも私は、
この小麦に強く惹かれました。
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初めてアングランを口にした時、
今まで知っていた小麦とは違うことに驚きました。
穀物の香り。深い甘み。そして力強さ。
噛むほどに味が広がり、飲み込んだ後にも余韻が残る。
小麦そのものに個性がある。
そんな感覚でした。
私は長年、大工として木に向き合ってきました。
木にもそれぞれ個性があります。
杉には杉の良さ。
栗には栗の良さ。
檜には檜の良さ。
どれも同じではありません。
小麦も同じでした。
アングランにはアングランにしかない個性があります。
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トロワパンでは、
アングランを石臼で製粉しています。
石臼は効率が良い機械ではありません。
時間も手間もかかります。
それでも石臼を使うのは、小麦の香りを残したいからです。
さらに天然酵母で長時間発酵させます。
急いで作ることはできません。
けれど、時間をかけることで小麦の風味はより豊かになります。
私たちは、小麦をただ膨らませるために発酵させているのではありません。
小麦が持つ本来の魅力を引き出したいのです。
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最近は、小麦を避ける人が増えました。
実際に私たちのお店にも、「パンをやめていました」
という方が来られます。
そして、「久しぶりにパンを食べました」
「またパンを楽しめました」
そんな言葉をいただくことがあります。
もちろん、すべての人に当てはまるわけではありません。
しかし私は、パンから離れてしまった人たちにも、
もう一度パンのある暮らしを届けたいと思っています。
その中心にあるのがアングランです。
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収量は少ない。扱いも難しい。
利益だけを考えれば、
決して効率の良い小麦ではありません。
それでも私は、これからもアングランを挽き続けます。
一万年以上前から受け継がれてきた小麦を、現代の食卓へ届けたいからです。
パンをやめていた人へ。まずは一枚、アングランを味わってみてください。
そこには、私たちが忘れかけている小麦本来の味があります。
この記事を書いた人
小川芳治
・フランスで古代小麦製パンを研修
・石臼製粉
・古代小麦専門店「トロワパン」





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